みなさんこんにちは!日本逆子治療協会の玉井です。以前にこのような質問を頂きました。こんな疑問にお答えします。
三陰交を押しても危険はない
三陰交を押しても危険はなく早産にもなりません。なぜなら、そんな簡単に出てきてしまうほど簡単に出産には至らないからです。
三陰交を押すとどんなことが起きる?
東洋医学では三陰交を押すと早産になるから妊婦さんに押すのは禁忌とされています。
研究でも三陰交を押すと子宮が収縮することがわかっています。早産の原因のひとつは過剰な子宮の収縮です。ここまでを一見すると「三陰交を押すことで子宮が収縮してしまい早産が促される」というような印象を受けるかもしれません。
ですが、そんなことは起きません。なぜなら、人間の体には恒常性があるからです。
恒常性(ホメオスタシス)
恒常性とは体の環境を一定に保とうとする機能です。例えば、体が冷えれば温めようとします。熱くなれば汗をかいて熱を逃して体温を下げようとします。三陰交を押せば『一時的』に収縮をします。
ですが、それはあくまで一時的であり、今度は柔らかくなろうと働きます。その反射を利用して子宮を柔らかくしたり血流を良くすることで逆子が治りやすくなるために、三陰交は逆子のツボとしても有名です。このような理由で三陰交を押しても早産にはならないということです。
三陰交は本当に妊婦に有害なのか?と調べた研究があるのでそれを紹介します。
三陰交が危険なのか調べた研究
早産にはならず危険なことは起きない
ブラジルでラットに行った研究では、悪影響がなかったとあります。
この研究では妊婦さんには禁忌とされている合谷というツボも一緒に使われましたが悪影響はありませんでした。
有害なことは起きない
Silva AV, Nakamura MU, Silva JB, Cordeiro JA, Mendes GE, Lima L. Could acupuncture at the so-called forbidden points be harmful to the health of pregnant Wistar rats? Acupunct Med. 2013 Jun;31(2):202-6. doi: 10.1136/acupmed-2012-010246. Epub 2013 Feb 5. PMID: 23384661.
他の禁忌とされているツボも有害はない
オーストラリアとニュージーランドで切迫早産の妊婦さんに鍼灸をした鍼灸師にアンケートをとった研究もあります。
三陰交以外にも禁忌とされているツボを使っていても安全そうというものでした。
実際に使って安全だった
Betts D, Smith CA, Dahlen HG. "Well I'm safe because…" - acupuncturists managing conflicting treatment recommendations when treating threatened miscarriage: a mixed-methods study. J Altern Complement Med. 2014 Nov;20(11):838-45. doi: 10.1089/acm.2014.0139. Epub 2014 Oct 29. PMID: 25354370.
ラットに対する研究が多い
妊娠した人ではなく妊娠したラットに対する研究が多いです。理由は倫理の関係かなと思います。
有害なことが起きるのか?という研究では有害になることを前提に研究がされるために人では難しいのかなと思います。僕が調べていて1番印象に残った研究があります。
その中では「鍼治療は胎児の発育に対する酸素供給を高め、母体のプロゲステロン濃度に影響を与え、子宮収縮を刺激するなど、妊娠中にリスクをもたらす可能性がある」というようなことが書いてあります。
胎児の酸素供給を高めてホルモンバランスを整えて子宮を刺激できるならとても効果があるように聞こえます。確かにそれだけの強い効果があります。それでもツボ自体は安全とされています。強い効果があるからこそ、使い方を間違えると危険になってしまうということを研究では危惧されています。
ここまで安全だとお伝えしましたが、絶対に三陰交を押してはいけない妊婦さんがいます。次はそれについてお伝えします。
三陰交を押すのが危険な妊婦さん
三陰交を絶対に押してはいけない妊婦さんは切迫早産の妊婦さんです。なぜなら、早産が促されてしまうからです。
ここまで恒常性があるから三陰交を押しても早産にはならないとお伝えしました。ですが、体調によって違います。例えば、体調が良い人が運動をする分には良いですが、体調が悪い人が運動をするのはどうでしょうか?体調は悪化し悪くなる一方だと思います。
適度な刺激は体にいい影響を与えますが、体調を見ない刺激は悪影響を及ぼします。既に切迫早産で体調がアンバランスなのに体調を見ずに刺激をすれば悪影響が起きることもあります。三陰交は安産、逆子、不妊治療、生理痛、排卵痛、生理不順などの婦人科にとても効果があります。
体調を見ないツボ押しで
悪影響の可能性
ですが、押せばいいというものではなく、必ず体調を見る必要があります。三陰交が妊婦さんに良くないのではなく、妊婦さんの体調を考えずに三陰交を押すと早産を促す可能性もあるということです。
もっと言えば、ツボに良い悪いはなく、体調を見ない刺激に良い悪いがあるということです。ただし、切迫早産の場合も少し押したくらいじゃ早産になるわけではないので、変に敏感になる必要はありません。
切迫早産の場合も基本的に体は妊娠を維持しようと働きます。なので、少しの刺激くらいで早産にはなったりしません。
よく僕が例えで使うのが逆説です。これをするととても理解しやすくなります。
逆説で考えてみる
今回で言えば「どうしたら早産にできるか?」を考えてみます。基本的には妊娠を維持しようと働くので早産にさせようと思ってもとても難しいことがわかります。薬を使えばたぶん簡単に可能だと思いますが、手技ではとても難しいです。薬でももしかしたらかなりの量が必要になるかもしれません。
もし、鍼灸師が切迫早産の人を早産にさせようと無理に強い刺激で鍼灸をしたり、無理にマッサージをすれば早産にすることもできます。ですが、それだけの反射(反応)を出せるくらいの技術が必要です。
これも使い用です。こう言った反射を利用して、なかなか出産が進まない場合に陣痛を促進することもできます。だから、三陰交は安産のツボとしても有名です。
これについては研究もあるので紹介しながら下記の記事で説明しています。
詳しくはこちら
-
安産のツボ(三陰交)の安全性【知らない人が多いツボの科学】
安産のツボを指導する人は多くいますが、安産のツボのメカニズムや科学を答えられる人はあまり多くありません。理由や科学、メカニズムのない指導がどれだけ不安を与えるかがわかります。
続きを見る
さいごに
三陰交は押してはいけないツボとして心配する妊婦さんがいますが、心配する必要はありません。辛い思いをして無理に刺激しなければ、悪影響はありません。それは早産も同じです。触れてもいけないという人もいますが、触れたら早産になるほど人間の体はやわではありません。
ですが、どんなことでも無理な刺激は悪影響があります。
例えば、妊婦さんや特に逆子の場合は「冷えが良くないから温めたほうがいい」と言われますが、無理に温めて妊婦さんが不調になるようでは悪影響が出てしまいます。
ツボと言う言い方をするとそれに効果があると印象を受けますがそんなことはありません。それは刺激をする場所の指針であって、それ以外の場所でも効果はあります。その効果は体調に合わせての刺激であればいいように働きますが、体調に合わない刺激であれば悪く働くこともあります。
1番大事なことはツボでも、どこの場所を刺激するかでもありません。それももちろん大事なんですが、1番大切なのはその人の体調に合わせて行うことです。今回は絶対に三陰交は押してはいけないと少し大袈裟に言いました。
ですが、研究をお伝えしたように押しても大丈夫です。だけど、それは知識のある鍼灸師が刺激の量を妊婦さんの体調に合わせて調整しているからです。妊婦さんが自分でやるのは控えたほうがいいかなと思います。
今日ではいろいろなマタニティケアがあります。どれもいろいろな意見があると思いますが、どんなものも素敵なものだと思います。ですが、どんなものを行う場合も決して無理をせず体調に合わせて行うように気をつけてください!