みなさんこんにちは！さかごらぼの玉井です。
今回は昨日Instagramで出したクイズについて答えます。
今回の記事の根拠には世界中で発表されている論文があります。逆子には科学的根拠がないとされていますが、発表されている研究や論文はたくさんあります。Google scalarで「breech（逆子）」と検索すると約10万件もヒットします。それにプラス僕が逆子治療をした約200例のデータを基にお伝えしていきます。
お腹が張ると逆子は治りにくい
お腹が張ると胎児は動きづらい
お腹が張ると胎児が動きづらくなり、逆子は治りにくくなります。お腹が張るというのは子宮が収縮することです。収縮すればお腹のスペースが減るので逆子は治りにくくなってしまいます。
お腹が張らせない基本は安静
お腹が張る時は安静にするのが1番いいです。ですが、逆子を治すために鍼灸マッサージをすればそれは刺激になります。刺激をすればお腹が張りやすくなります。
逆子を治すにはどうするのが1番？
安静にするべきだけど、刺激もしなければいけない。お腹が張る妊婦さんの逆子を治したい場合はどうするべきかを考えました。
オキシトシンが出ることや下半身の刺激でお腹が張ることは知っていましたが、それ以外にもあるのか調べ直しました。
お腹の張りに影響のあるホルモン
（子宮の収縮）
プロゲステロンが収縮させない
今まで子宮の収縮に影響するのはオキシトシンだと思っていました。ですが、プロゲステロンも影響するようです。オキシトシンは収縮に、プロゲステロンは収縮の抑制に働きます。オキシトシンが減少し、プロゲステロンが増加すればお腹が張りにくくなります。アメリカとドイツの論文にあります。*参考文献(1)(2)(3)
オキシトシンが出る時(子宮が収縮する時)
人とコミュニケーションを取るとでます。会話する、肌が触れる、ハグ、キス、性交渉(オーラルセックスを含む)、授乳などです。オキシトシンは別名で“幸せホルモン”とも呼ばれています。セロトニンなどにも作用します。
オキシトシンと幸福の関係についてはアウトプット大全などを書いている樺沢紫苑さんの著書「精神科医が見つけた３つの幸福」がとてもわかりやすいと思います。気になる方はぜひ。
オキシトシンの抑制ではなく、プロゲステロンを増加させる。
人と触れ合えば出てしまうオキシトシンを抑制するのは難しいと考え、プロゲステロンが増加した論文を探しました。それではなかなか論文は見つかりませんでした。なので、検索方法を変えて“鍼灸でプロゲステロンが増加した研究”を探しました。鍼灸でプロゲステロン量が変化する論文は多くありました。
プロゲステロンは減少する
論文はたくさんあったんですが、鍼灸をするとプロゲステロンの量は減少していました。その中には増加するものもありましたが、圧倒的に減少する論文の方が多いです。
プロゲステロンに関する論文の多くは不妊の研究
プロゲステロンと鍼灸の関係を調べるとほとんどが不妊の研究であり、不妊の原因を解決するためにプロゲステロンを減少させるのも目的の一つでした。なので、結論の多くは“プロゲステロンが減少したので不妊に鍼灸は効く”というものばかりでした。*参考文献(4)
不妊のツボの効果
この研究で使われているツボは三陰交があります。三陰交はオキシトシンに影響し出産にも影響します。気になる方は読んでみてください。
不妊以外の三陰交の効果
プロゲステロンを増加させる研究
もし、プロゲステロンを増加させる必要がある病気があれば、それに対する鍼灸の効果を調べればプロゲステロンが増加する論文が見つかると思い調べました。対象は「黄体機能不全」に対する鍼灸の効果です。
これには驚きました。
ほとんどが“耳針”でした。黄体機能不全に対する研究の多くは普通に体に刺すのではなく、わざわざ耳に刺して研究していました。結果は耳の針は性ホルモンのバランスを調整し黄体機能不全が改善するというものでした。これは論文はあったんですが、機序がわからないのでまた調べて追記します。*参考文献(5)
お腹を張らせない方法
(子宮を収縮させない方法)
収縮を抑えることはできない
収縮させないのは難しいと感じました。人と触れ合えば収縮しやすくなるし、運動(日常生活動作)でも子宮は収縮してしまいます。また、プロゲステロンをコントロールするのも難しそうです。そこで考え方を変えました。そもそも、子宮の収縮を抑えることはできないんじゃないか？逆子を治すためには収縮を抑制する必要がないんじゃないか？と考えました。
至陰も三陰交も収縮する
子宮が収縮すると逆子は治りにくくなります。ですが、逆子で有名な至陰と三陰交も収縮します。収縮させても逆子は治るということです。また、お腹が張りやすい人でも逆子は治ります。では、何が問題なのでしょう？
本当の問題は“反射の強さ”
子宮の収縮は止められません。なので、多くの人が収縮しています。ですが、収縮の強さは妊婦さんごとに違います。なぜなら、切迫早産になる人がいるからです。切迫早産になる人とならない人の違いは、反射が強く出やすいかどうかです。
切迫早産になった人とならない妊婦さんの差
例えば、今まで逆子治療をしていた中で毎日２時間歩く妊婦さんがいました。それだけ歩けば子宮は収縮するはずです。ですが、切迫早産になっていません。それに対して、毎日バスで通勤するだけで切迫早産になってしまったという人もいます。
切迫早産になった理由
刺激の量と回数は圧倒的に前者の方が強いです。それに対しては後者はそれほど刺激は強くありません。これには刺激の量ではなく、母体の状態が影響しています。では、どんな母体の状態なのか？自律神経反射を含む様々な反射が強く出てしまい、少しの刺激で子宮が収縮したと考えられます。
お腹が張る人の治療
反射の調整はちょー簡単！
反射を抑えるのは簡単です。全身の治療をすればいいだけです。
こう考えれば、逆子治療をした時にお腹が張りやすい人と張りにくい人の差が分かります。お腹が張りやすい人は体調が悪いです。多くの場合はお腹は張りません。むしろ、多くの場合は張りにくくなります。体調が悪い人が張りやすいし、張りやすい人は体調が悪いです。ということは、体調を改善できるように刺激すれば子宮は収縮しにくくなるはずです。
至陰と三陰交
鍼灸は刺激することが目的です。至陰と三陰交を刺激することで一時的に子宮が収縮しても、それは刺激に対する反応でその後には子宮の血流が良くなるから逆子が治りやすくなります。逆子治療の際に至陰と三陰交を刺激してお腹が強く張るなら、まずは他から治療するべきです。
首周りの施術が効果的
下半身を刺激すれば、至陰と三陰交をした時の反射でわかるように自律神経反射で子宮が収縮するのは想像できます。ですが、自律神経を刺激する必要があります。なので、なるべく反射が出ないように自律神経を刺激するように首周りを刺激するのが1番いい方法だと思います。ストレッチを指導するのもいいと思います。
子宮に強い収縮が起きないようにする
お腹が張りやすい人や逆子治療をするにあたっては全身治療をすればお腹が張りにくくなり、逆子も治りやすくなるはずです。もし、逆子治療をする場合、お腹が張るのが辛いという人を治療する場合は参考にしてみてください。
切迫早産の場合
すでに切迫早産になったら安静にするほかありません。いくら体調を整えれば張りにくくなるとはいえ、体調を整えるために刺激します。ですが、刺激すればお腹は張ります。切迫早産になっている場合は、刺激するべきではありません。また、あまりにも体調が悪い場合は慎重に刺激するべきです。
参考文献
(1)Soloff MS, Jeng YJ, Izban MG, Sinha M, Luxon BA, Stamnes SJ, England SK. Effects of progesterone treatment on expression of genes involved in uterine quiescence. Reprod Sci. 2011 Aug;18(8):781-97. doi: 10.1177/1933719111398150. PMID: 21795739; PMCID: PMC4051400.
(2)Di Renzo GC, Giardina I, Clerici G, Brillo E, Gerli S. Progesterone in normal and pathological pregnancy. Horm Mol Biol Clin Investig. 2016 Jul 1;27(1):35-48. doi: 10.1515/hmbci-2016-0038. PMID: 27662646.
(3)Brown AG, Leite RS, Strauss JF 3rd. Mechanisms underlying "functional" progesterone withdrawal at parturition. Ann N Y Acad Sci. 2004 Dec;1034:36-49. doi: 10.1196/annals.1335.004. PMID: 15731298.
(4)Yang FX, Yang ZX. ["Thirteen acupoints for regulating menstruation and promoting pregnancy" for diminished ovarian reserve: a prospective cohort study]. Zhongguo Zhen Jiu. 2020 Jun 12;40(6):619-22. Chinese. doi: 10.13703/j.0255-2930.20190925-k0001. PMID: 32538013.
(5)Gerhard I, Postneek F. Auricular acupuncture in the treatment of female infertility. Gynecol Endocrinol. 1992 Sep;6(3):171-81. doi: 10.3109/09513599209015552. PMID: 1442162.